扇子の各部位の名称|構造や主な種類など基礎知識を解説
扇子は、蒸し暑い季節にあおいで風を送り、涼むために用いられる道具です。団扇(うちわ)のルーツは中国ですが、携帯に便利な扇子型にするというアイデアは日本で発明されたともいわれています。かつては木の束を重ねて作られた「檜扇(ひおうぎ)」と呼ばれるものでした。日本では奈良・平安時代から作られ続けている扇子ですが、その構造は昔も今もほとんど変わっていないといいます。数本から数十本の「扇骨」と、表面の「扇面」を基本に作られている点は、どんな扇子であっても変わりません。今回は、世界中に愛用者も多い扇子の、各部位の名称や種類についてご紹介します。
扇子の各部位の名称
扇子はさまざまなパーツからできており、すべてに名前がついています。まずは、扇子の部位それぞれの名称と特徴をご紹介します。
扇子の各部位の名称
扇面(せんめん)
「扇面」とは、扇子の表側に紙や布を張り付けた部分のことです。扇いで風を作り出す、扇子の主たる部分といえるでしょう。紙張りタイプの扇子の場合は、この部分を「地紙」と呼ぶこともあります。
天と地
「天」は、扇面の一番上の部分、「地」は、扇面の下の部分を指します。良い扇子の見分け方として、天の部分がしっかりと閉まるつくりになっていることが挙げられます。閉じたときに扇面がぴったりと折り重なる扇子は、天が綺麗な平らになるのです。
扇骨(せんこつ)
扇骨とは、扇子の骨組みの部分を指す言葉です。主に竹を原料としていますが、高級品では檜や白檀(びゃくだん)のような香木を使ったものもあります。カジュアルな扇子では、扇骨がプラスチック素材のものもあります。良い扇子は、扇骨がしっかりしたつくりになっているのが特徴です。
親骨(おやぼね)
「親骨」は、扇骨のなかでも両端にある厚くて丈夫な骨の部分を指します。先端部分が内側に狭められて作られていますが、これは閉じたときに不用意に開かないようにするためです。この狭められた先端部分は、「ため」と呼ぶこともあります。
中骨(なかぼね)
「中骨」は、親骨に挟まれた内側の扇骨のことで、「仲骨」と表記することもあります。親骨と比べると、しなやかで薄く作られていることが特徴です。中骨と親骨の合計本数を「間数」といいますが、少ないものは8間程度、多いものは40間程度にもなります。一般的には、間数が多いほうが高級品とされています。
要(かなめ)
「要」とは、親骨と中骨を一点で留めている部分のことです。金属やプラスチックなどで作られており、「要目」と表記することもあります。外見が蟹の目に似ていることから、もとは「カニノメ」と呼ばれていたのが変化したといわれています。
要は、壊れると扇子が使えなくなってしまう非常に重要な部分です。そのため、とりわけて重要であることを意味する「肝心要」という言葉の語源になっています。
房(ふさ)
「房」は、パイプ状になっている要や、片管という環のついた要に取りつけるタッセル状のものです。もともとは紐を通してストラップのように取りつけ、手首に通して使う目的で作られていました。現在では、祝い扇子に紅白の房をつけたり、好みの房をつけ替えたり、装飾として使われることが多くなっています。
山と谷
「山」と「谷」は、蛇腹状になっている扇面の折り目の部分を指します。表から見て盛り上がっているほうが山、へこんでいるほうが谷です。
【扇面の素材別】扇子の主な種類
扇子は、京扇子や江戸扇子のように生産地で呼び分けられることもありますが、扇面の素材ごとにさまざまな種類に分けられます。ここでは、一般的によく見られる扇子の種類についてご紹介します。
紙扇子
扇面に紙を使用している扇子を、「紙扇子」と呼びます。日本で古くから使われている、もっとも一般的な扇子といえるでしょう。
中骨のしなりによって多くの風が起こせるため、あおいで風を送り涼しさを得る目的で使用するのに適しています。扇子の両面に紙を貼り合わせて作られているため、中骨が見えにくく、見栄えが良いのが特徴です。
布扇子
「布扇子」は、扇面に紙ではなく生地を使用した扇子のことです。扇面には刺繍やプリントが施されることもあり、紙扇子にはない華やかなデザインが特徴です。ただし、紙に比べて厚みがあるため、生地は片面張りになっています。耐久性が高く破れにくいのがメリットですが、裏面は中骨が見えてしまい見栄えが悪くなってしまう可能性があります。
使われる生地によって適したシーンがあるため、お出かけのシチュエーションや服装に合わせて種類を変えるという楽しみ方もできます。綿素材は、柔らかく優しい雰囲気があるため、浴衣や着物に合うでしょう。麻素材は清涼感と素朴な質感があり、夏服や同じ麻素材の服に合わせるのがおすすめです。ポリエステル素材は透け感が出るのが特徴で、普段着やカジュアルな恰好に合います。シルク素材は高級感のある光沢があるため、ビジネスシーンやフォーマルな場所に合うでしょう。
白檀扇子
香木である白檀の木片を重ねた板扇もあります。板扇とは、扇面には紙も生地も貼らない扇子のことです。あおいで風を送ることを目的として使用するのではなく、主に香りを楽しむために使われます。多くの場合透かし彫りや描き絵が施されるため、香りのみならず品のある美しいデザインも楽しめます。
より詳細な扇子の種類に関しては、次項をご確認ください。
扇子の主な種類|素材、用途、産地、サイズ別の分類と正しい使い方
伊場仙のおすすめ扇子4選
「伊場仙」は天正18年創業と、430年もの長い歴史をもつ扇子の老舗です。日本の伝統文化を継承していくために、江戸のデザインや色を取り入れた製品づくりに力を入れています。伊場仙の扇子は、厳選された国産の竹、和紙、繊維など、こだわりの素材を使用しているのが特徴です。ここでは、伊場仙がおすすめする魅力にあふれた扇子をご紹介します。熟練の職人の手によって作られた、自慢の扇子を、ぜひお楽しみください。
浮世絵 木版画飾り扇 浮世絵 冨嶽三十六景 北斎 神奈川沖 浪裏 箱&扇子立て付き
江戸時代後期に活躍した浮世絵師・葛飾北斎の、代表作ともいえるシリーズ作品「富嶽三十六景」。そのなかでも特に有名な、「神奈川沖浪裏」を大胆にデザインしました。落ち着いた白と青の配色で描かれた、荒々しい波しぶきをあげる巨大な波が印象的な作品です。波のなかには小さな漁船が浮かび、その対比が迫力を一層引き立てています。中央には波しぶきで霞む富士山が描かれていますが、これは富士山の存在を強調するための技法とされています。伊場仙でも人気の高い、数量限定モデルです。
江戸扇子 馬九行く(うまくいく)
九頭の馬が、左向きにひた走る様が描かれている江戸扇子です。馬九行くは「うまくいく」と読み、縁起のいい当て字として人気があります。さらに九頭馬は、勝負運・金運・出世運・家庭運・愛情運・健康運・商売繁盛・豊漁豊作・受験合格と、9つの運気を表すとされています。また、左向きに描かれている左馬には「右に出るものがない」という意味もあるため、ここ一番の勝負時にもおすすめです。
江戸扇子 両面柄 トンボブルー
五穀豊穣の象徴であるトンボは、前にしか進めず後退しないことから、「勝虫(かちむし)」と呼ばれていました。縁起のいい虫として武士の間で重宝され、武具や装束などでトンボモチーフが数多く使われています。勝負事や諦めたくないことがあった場合、ゲン担ぎとしてトンボモチーフのものを使用する方もいるようです。
しけびき扇子 中はなだ
しけびきの「しけ」は、カイコから引き出される絹糸のことを表す言葉です。櫛状に削いだしけの刷毛で、反物に繊細な縞柄を染めつける技法を「しけびき」といいます。すべて職人の手作業で行われるため、しけびき扇子は、織り縞とは異なる味わい深い縞・格子を楽しめます。「中はなだ」は、藍染めの色の一種で、少し暗めの青色のことです。専門の職人による、優雅なしけびきの縞模様をお楽しみください。
扇子袋・箱(伊場仙ECサイト)
扇子の部位の名称を把握して細部までこだわろう
扇子の部位の名称や、それぞれの特徴、おすすめの扇子などをご紹介しました。扇子はさまざまなパーツから成るため、組み合わせ次第でさまざまな味わいが楽しめます。細部までこだわって、ぜひお気に入りの扇子を探してみてください。