一、彫師(ほりし)
彫師は、浮世絵版画の板技を起こす職人であり、浮世絵の特徴的な色彩と質感を持つ板木を作り出す技術を持っています。
木版画では、凸版印刷を用いるため、顔料を乗せたいところだけを彫り残します。そのため、輪郭線両側に小刀で切り込みを入れ、不要な部分は鑿(のみ)で彫り取ります。毛割りや毛彫りのような微細箇所は、絵師ではなく彫師に任せることが一般的です。
絵師の技術により描かれ、かつ版元の検閲を受けた輪郭線のみの版下が、厳格な品質基準を満たしたものを、彫刻技術によって制作されます。
絵師は、校合摺りに色指定をして、再び彫師に戻します。彫師は色版を彫り、色ごとに版木を分けますが、面積が狭い色は1枚に複数色を含めることもあります。全ての色版が完成したら、あとは摺師が仕上げます。
二、摺師(すりし)
摺師は、錦絵を作成する上で、高度な紙への摺り技術や適切に選択した色料を用いた多色摺りの版画職人のことです。
主版(おもはん)は、彫師によって輪郭線が掘られた版木から、刷毛を使って墨若しくは色料を版木に染み込ませ、その上に適度に湿らせた紙を置く。目印で紙を安定させ、強度を持った馬連を使用して摺り出す。
「馬連」は、木や竹の手作りの「芯」に、渋紙を貼り重ね、そして漆で固め、さらに芯を含める「当皮あてかわ」をあてて、それを包み込む竹皮の「包み皮」を用いて、摺師が作る。
その後は、色版を使い多色摺りになる。色数分の版木を必要であり、面積の狭い色は他の色版と兼用することがある。版をずらさない様に、馬連で摺る。地色を活かす凹凸表現の「空摺り」や、版木を湿らせてから色料を摺り込みにじませる「ぼかし」などがある。
三、扇子ができるまで
こちらでは江戸扇子を例として、扇子の制作工程を映像でわかりやすく配信しております。
「1. 親骨の制作」
「2. 扇面の下地制作」
「3. 扇面の制作」
「4. 折り作業」
「5.仕上げ作業」
すべての制作工程には、高度な技術と経験が必要となります。
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