ここまでお伝えしたように、扇子は縁起物であることから、基本的には贈り物に適した品物だとされています。その一方で、お祝いの場面の中には、扇子がプレゼントに向かないと考えられている場合もあります。以下の贈り物と縁起に関しては諸説あり、考え方はさまざまです。扇子が向かないとされているケースについても確認してみましょう。
結婚式のとき
諸説ありますが、結婚祝いの贈り物に扇子を選ばないほうが良いとする考え方もあります。その理由は、扇子には「広がる」という要素があるため、新郎新婦の距離が広がってしまうことを連想させるためだといわれています。ただし、こちらはあくまで一つの考え方です。扇子を贈り物に選ぶときは、プレゼントを受け取る方の気持ちに配慮しながら検討すると良いでしょう。
なお、扇子は結婚式で和装をする際の小物として用いられています。たとえば、新郎新婦が和装をする場合は扇子を身に着けるのが一般的です。女性の第一礼装である白無垢や色打掛を着た花嫁さんは、「筥迫(はこせこ)」や「懐剣(かいけん)」などの持ち物と合わせて末広を持つことで知られています。また、男性の第一礼装である黒羽二重五つ紋付を着た花婿さんも、扇面が白地の扇子「白扇(はくせん)」を手に持ちます。
結婚式では新郎新婦だけでなく、和装で列席するゲストも扇子を身に着けるのが一般的です。たとえば、新郎新婦の家族の女性は、第一礼装の黒留袖や色留袖などを身に着けますが、帯に末広を挿して挨拶などで使います。新郎新婦の家族の男性は、新郎と同様に第一礼装の黒羽二重五つ紋付を身に付けて、白扇を手に持ちます。
このように、扇は縁起が良いとされており、結婚式でも主役や列席者に使われるアイテムです。結婚祝いでは選ばないほうが良いとする説もありますが、基本的には縁起物として知られています。
中国の文化圏で恋人に扇子を贈る時
中国の文化圏でお祝いをするときは、基本中国語で、扇子は「善行(シャンズ)」と同音異義語で、「優しさ」「善行」を意味することから、友達へのプレゼントに最適です。また、結婚式や求婚の際に贈り物として使われることもあります。民間伝承では、扇子は邪気を払い、愛を定着させる縁起物としても使われています。
しかし、扇子を恋人同士で贈ることはあまり人気がありません。その理由は、中国語で扇子(シャンズ)の発音が、「散(シャン)華」という言葉を連想させるためです。扇子は夏に使い、冬には捨ててしまうという事もあり、別れをイメージさせることからです。
また、中国では扇子は縁起物としても贈られ、芸術作品としても評価されています。書道扇面は、美の楽しみを与える優雅な芸術の贈り物とされています。現在では、中国伝統文化に興味のある人にとって、扇子を贈ることは良い選択と言えます。
このように、世界各地の様々な習慣によって、実際の象徴的な意味も国や地域によって大きな違いがあります。文化の異なる方への贈り物のシーンでは、相手の文化的な背景まで配慮してふさわしい品物を選択しましょう。